行政書士が毎日使うナレッジAIーAIに覚えさせるべきなのは、法律ではなく『実務知識』(2026年9月9日)

行政書士が毎日使うナレッジAIーAIに覚えさせるべきなのは、法律ではなく『実務知識』(2026年9月9日)

以前の記事で、私が日々の業務で使っている「ナレッジAI」をご紹介しました。
Obsidianに事務所内の知識を蓄積し、Claude Codeから必要な情報を取り出せるようにした、いわば「事務所専用AI」です。

この事務所専用AI、私は毎日使っています。そして使えば使うほど、ひとつ気づいたことがあります。それは、AIに覚えさせる価値があるのは、「法律」そのものではない。ということです。

本当に残したいのは「実務で得た知識」

もちろん、行政書士の仕事に法令や制度の知識は欠かせません。
ただ、法令や制度については、法令集や行政機関のWebサイト、手引きなど、調べるための情報源がすでに存在します。

一方で、実際に仕事をしていると、

「この役所では、以前この資料も求められた」
「このケースでは、ここが論点になった」
「この申請では、この部分で補正になった」
「このお客様には、以前ここまで確認している」

といった知識が日々生まれます。

こうした情報は、インターネットで検索してもなかなか出てきません。
しかし、実務ではむしろ、こうした「実際に仕事をしたからこそ得られた知識」に助けられる場面が非常に多いと感じています。

実際のObsidianの画面はこちら。顧客情報に関係のない実務知見のみ表示しています。

行政書士は「異なる種類の申請」をたくさん扱う

行政書士という仕事は、ナレッジAIとの相性が良い仕事なのかもしれません。
その理由のひとつが、異なる種類の申請を数多く扱うことです。

許認可ひとつをとっても、業種や制度によって必要書類も要件も窓口も異なります。
さらに、同じ種類の申請であっても、申請者の状況や自治体などによって確認すべきポイントが変わることがあります。
毎日のように同じ作業だけを繰り返す仕事であれば、ノウハウは自然と頭に残ります。

ところが、

「以前、この申請をやったのは半年前」
「似たケースを扱った気がするけれど、どう対応しただろう」
「この役所に問い合わせたことはあるけれど、何を確認しただろう」

ということが、行政書士の実務ではよくあります。

そのたびに資料を探したり、過去のメールを検索したり、もう一度調べ直したりする。
一つひとつは数分、数十分の作業でも、積み重なるとかなりの時間になります。

そこで役に立つのが、ナレッジAIです。

「前にやった仕事」を、次の仕事に使えるようにする

私のナレッジAIには、日々の業務で得た情報を「実務知見」として残しています。
といっても、立派なマニュアルを毎回作っているわけではありません。

役所に確認して分かったこと。
申請して初めて気づいたこと。
補正になったポイント。
同業者から聞いた実務上の情報。

こうしたことを、走り書きでもいいので残しておきます。
すると、数か月後に似た案件が来たとき、

「以前、似たケースはなかった?」
「○○の申請で注意することは?」
「この役所について、過去に何か記録している?」

とAIに聞けば、蓄積した記録から関連する情報を探してくれます。
人間がすべてを覚えておく必要はありません。

経験したことを記録しておけば、必要になったときにAIが思い出させてくれる。
これが、毎日使っていて特に便利だと感じている部分です。

これは行政書士だけの話ではない

そして、この仕組みを使っているうちに、これは行政書士事務所だけの話ではないと思うようになりました。

例えば、ある会社が一つの事業だけを長年続けているとします。
その事業については、社内に十分な経験が蓄積されています。
ところが、会社が成長して新しい事業を始めようとすると、状況が変わります。
新しい取引先、新しい手続き、新しい業務、新しいトラブル。

事業を拡大するほど、会社が扱わなければならない「知らないこと」は増えていきます。
最初は社長や担当者が調べて対応するでしょう。
そして、試行錯誤しながら少しずつノウハウが生まれていきます。

問題は、そのとき得た知識が会社に残っているかどうかです。

担当者の頭の中だけに残っていたり、メールやチャットに埋もれていたりすると、次に同じ問題が起きたとき、また一から調べることになります。
これは非常にもったいないことです。

会社が経験したことを、会社の知識にする

例えば、新しい事業を始めたときに、

「この手続きでは、ここに注意する」
「この取引先とは、こういう条件を確認する」
「この問題が起きたときは、こう対応した」
「この業務は、この順番で進めるとうまくいった」

といった情報を少しずつ残していく。
そして、必要になったときにAIから取り出せるようにしておく。
そうすれば、一度経験したことを次の仕事に活かせます。

行政書士事務所でいえば「異なる種類の申請を扱う」ということですが、企業でいえば「新しい事業や業務に挑戦する」ことに近いのかもしれません。

どちらも、新しいことに取り組むたびに知識が生まれます。
その知識をその場限りにするのか。
それとも、次に使える形で会社に残していくのか。

この違いは、時間が経つほど大きくなると思います。

AIを賢くするのではなく、会社を賢くする

生成AIというと、どうしても

「どのAIが一番賢いのか」
「どんなプロンプトを書けばいいのか」

という話になりがちです。
もちろん、それらも重要です。

しかし、毎日ナレッジAIを使っていて感じるのは、AIそのものの性能とは別に、
「自分たちは、仕事を通じて得た知識をどれだけ残せているか」ということの重要性です。

どれだけ優秀なAIを導入しても、会社独自の経験までは最初から知っているわけではありません。

だからこそ、

仕事をする。
新しいことを知る。
記録する。
次の仕事で使う。

この循環を作ることが大切なのだと思います。

AIを賢くするというより、「仕事をするたびに、会社が少しずつ賢くなっていく。」
私が作っているナレッジAIは、そのための仕組みなのかもしれません。
まだまだ改善途中ですが、実際の業務で使いながら、これからも少しずつ育てていきたいと思います。