クラフトビール事業者や酒販事業者の相談を受けていると、よく聞く言葉があります。
「免許はちゃんと持っています。」
もちろん、それは大事です。
しかし私は、その言葉を聞いた時ほど慎重になります。
なぜなら、問題の多くは「無免許」ではなく、「事業モデルが変わったのに、免許や運用の確認が追いついていない」ところから発生するからです。
今回のケースもまさにそうでした。
クラフトビール製造会社がサブスクリプションサービスを始めた。
会員数は800人を超え、売上も順調。
社長は手応えを感じている。
しかし社内では、
・他社商品の同梱
・県外配送の増加
・会員限定販売
・曖昧な利用規約
などが発生していました。
私は、この問題の本質は酒税法ではないと考えます。
本質は「事業が変わったのに管理が変わっていないこと」
中小企業ではよくあります。
創業時はシンプルだった。店舗販売だけだった。自社商品だけだった。
ところが事業が伸びる。ECを始める。サブスクを始める。イベントを始める。他社商品も扱う。
気づけば当初とは全く違うビジネスになっている。
しかし社長の頭の中では、「昔確認したから大丈夫」のままになっている。
私はここに危険があると思っています。
法律が変わったのではありません。
事業が変わったのです。
よくある失敗は規約から直そうとすること
こういう相談を受けると、まず利用規約を修正しようとする会社があります。
あるいは、SNSで批判されている投稿への対応を考えます。
もちろんそれも必要です。
しかし私は先に別のことをします。
それは、「今、何を売っているのか」を整理することです。
意外ですが、ここを説明できない会社は少なくありません。
・誰の商品か
・誰が販売しているか
・誰に送っているか
・どうやって代金を受け取っているか
・何が会費で何が商品代なのか
これを図にすると、初めて全体が見えてきます。
私はまずそこから始めます。
行政書士が見るべきは申請書ではなく事業の流れ
許認可業務というと、申請書類を作る仕事だと思われることがあります。
しかし実務では違います。
本当に重要なのは、事業の流れを理解することです。
例えば今回のケース。
サブスクと言っても、実際には複数のサービスが混在しています。
・定期配送
・会員制度
・限定販売
・イベント参加権
・他社商品の取扱い
これらは一つの商品ではありません。
複数の仕組みが重なっています。
そのため、「サブスクだからこうです」という単純な話ではなくなります。
私はまず、事業全体を分解して見ます。
社長が見落としやすい本当のリスク
このケースで社長が気にしていたのはSNSでした。
確かにSNSは気になります。
しかし私は、本当に怖いのはSNSではないと思います。
怖いのは、事業の拡大スピードに管理体制が追いついていないことです。
例えば、会員が800人いる状態で運用変更が必要になったらどうなるでしょうか。
説明はどうするのか。既存会員への対応はどうするのか。解約対応はどうするのか。返金が発生するのか。
こうした問題の方が、経営への影響は大きくなります。
SNSは結果です。
原因ではありません。
私なら最初に何を確認するか
私ならまず、販売スキームを紙に書き出します。
そして、
・商品
・代金
・契約
・配送
・会員特典
を整理します。
その上で、保有している免許や制度との関係を確認します。
この順番が大切です。
免許を確認してから事業を見るのではありません。
事業を理解してから免許を見るのです。
私はその方が実態に近いと思っています。
実務上のチェックポイント
初回面談では次の点を確認します。
・現在保有している免許
・販売方法
・会員制度の内容
・配送先エリア
・商品構成
・他社商品の有無
・決済方法
・利用規約
・広告内容
・会員数
・イベント内容
・事業計画
そして、「この事業を第三者に説明できますか」と質問します。
説明できない場合は、まず事業整理から始めます。
まとめ
私は、この問題の本質は酒類販売ではなく、事業進化に管理体制が追いついていないことだと考えます。
事業が伸びることは良いことです。
しかし伸びるほど、当初の前提は崩れていきます。
だからこそ、「昔確認したから大丈夫」ではなく、「今の事業はどうなっているのか」を確認する必要があります。
重要なのは、免許があるかどうかではありません。
今のビジネスモデルを説明できるかどうかです。
私は、酒類事業の相談を受けたとき、まず販売スキームを図にするところから始めます。
それが最初の一手だと考えています。
【免責文】
本記事は一般的な経営判断および酒類事業に関する考え方を示したものであり、個別案件に対する法的見解や行政解釈を示すものではありません。実際の対応にあたっては、事業内容、免許内容、取扱商品、販売方法等を踏まえて個別に検討する必要があります。
