ネット通販は、実店舗を持たずに商品やサービスを販売できる便利なビジネスモデルです。個人でも比較的始めやすく、横浜市で新たにネットショップを開設したいと考えている方もいるでしょう。
一方、ネット通販は「サイトを作って商品を掲載すればすぐに始められる」というものではありません。特定商取引法をはじめ、景品表示法や個人情報保護法など、事業内容に応じてさまざまな法律への対応が必要です。
また、販売する商品によっては、許可や届出などが必要になる場合もあります。
法律上必要な表示が不足していたり、広告表現に問題があったりすると、消費者とのトラブルだけでなく、行政上の問題につながる可能性もあります。
そこで本記事では、横浜市でネット通販を始める方や、すでにネットショップを運営している事業者に向けて、ネット通販法務で押さえておきたい5つの注意点を行政書士の視点から解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な事案については、関係行政機関や弁護士、行政書士など適切な専門家へご確認ください。
横浜市でネット通販を始める前に知っておきたい法務
ネット通販では、消費者が実際に商品を手に取ったり、販売者と対面したりせずに契約することが一般的です。
そのため、販売者には消費者が適切に判断できるよう、必要な情報をわかりやすく表示することなどが求められています。
まずは、ネット通販にどのような法律が関係するのか確認しましょう。
ネット通販にはさまざまな法律が関係する
ネット通販に関係する代表的な法律として、次のようなものがあります。
・特定商取引法
・景品表示法
・個人情報保護法
・消費者契約法
・民法
このほかにも、取り扱う商品やサービスによって食品衛生法、酒税法、医薬品医療機器等法(薬機法)、古物営業法などが関係する可能性があります。
「ネット通販」という一つの法律が存在するわけではありません。
何を販売するのか、誰に販売するのか、どのような広告を行うのかなどによって、確認すべき法律が変わる点がネット通販法務の特徴です。
個人事業主や小規模なネットショップでも法律への対応は必要
「個人で小さく始めるネットショップだから、法律はあまり関係ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。
しかし、事業者として通信販売を行う場合には、事業規模が小さいからといって当然に法的な義務がなくなるわけではありません。
ECモールやネットショップ作成サービスを利用する場合でも同様です。
プラットフォーム側が用意している仕組みだけに頼るのではなく、自分自身の販売方法や商品にどのようなルールが適用されるのか確認することが重要です。
ネット通販で法務対策が重要な理由
ネット通販では、商品の内容、価格、支払方法、発送時期、返品条件などについて、販売者と購入者の認識が食い違うことがあります。
たとえば、
「返品できると思っていた」
「追加料金がかかることを知らなかった」
「広告を見て想像した商品と違った」
といったトラブルです。
販売条件やルールを事前に整理し、適切に表示することは、法律への対応だけでなく顧客とのトラブルを防ぐうえでも重要です。
注意点1|特定商取引法に基づく表示を確認する
ネット通販を始める際、特に重要になる法律の一つが特定商取引法です。
インターネット上で申込みを受けて商品などを販売する取引は、一般に同法上の「通信販売」に該当します。
ネットショップを開設するときは、特定商取引法の通信販売に関するルールを確認しておきましょう。
「特定商取引法に基づく表記」に必要な項目
通信販売では、法律上定められた事項を広告に表示する必要があります。
たとえば、販売価格や送料など購入者が負担する金銭、代金の支払時期・方法、商品の引渡時期、返品に関する事項、事業者に関する情報などです。
ネットショップでよく見かける「特定商取引法に基づく表記」というページは、こうした事項を整理して掲載するために設けられています。
ただし、テンプレートをそのまま掲載すればよいとは限りません。
自社の販売方法や決済方法、配送方法などに合わせて内容を確認することが大切です。
事業者名・住所・電話番号などを正しく表示する
通信販売の広告では、販売業者の氏名または名称、住所、電話番号など、法令上必要となる事項を適切に表示することが求められます。
個人事業主が自宅でネット通販を始める場合には、住所や電話番号の表示について不安を感じるケースもあるでしょう。
一定の事項については、法令上認められる条件のもとで表示を省略できる場合があります。
ただし、「個人だから住所を書かなくてよい」「請求されたときだけ教えれば必ず問題ない」などと一律に判断することは避けるべきです。
自分の販売形態でどのような表示が必要なのか、最新の法令や行政機関の案内を確認しましょう。
返品・キャンセル条件をわかりやすく記載する
ネット通販で特にトラブルになりやすいのが返品です。
一般的な通信販売には、訪問販売などに設けられているクーリング・オフ制度が当然に適用されるわけではありません。
一方、通信販売には返品について独自のルールがあります。
事業者が返品の可否や条件について特約を設ける場合には、その内容を消費者が認識しやすいよう適切に表示することが重要です。
「返品不可」としたい場合も、単に小さな文字で書いておけば十分とは限りません。
販売ページや申込画面などを含め、消費者にとってわかりやすい表示になっているか確認しましょう。
注意点2|ネット通販の広告表現に注意する
ネット通販では、写真や文章による広告が購入の判断を大きく左右します。
売上を伸ばしたいからといって、実際の商品より著しく優良または有利であると消費者に誤認させるような表示をすると、景品表示法などの問題が生じる可能性があります。
誇大な広告表示を避ける
商品を魅力的に見せるため、
「絶対に効果があります」
「日本で一番」
「業界No.1」
などの表現を使いたくなることがあります。
しかし、客観的な根拠がないにもかかわらず、このような断定的・最上級の表示をすると問題になる可能性があります。
広告文を作成するときは、「その表現を裏付ける合理的な根拠があるか」という視点を持つことが重要です。
景品表示法に注意した商品・サービスの紹介方法
景品表示法では、商品・サービスの品質や内容について、実際より著しく優良であると一般消費者に示す表示などを規制しています。
また、価格などの取引条件について、実際より著しく有利であると誤認させる表示も問題になります。
ネット通販では、WebサイトだけでなくSNSやインターネット広告などを利用して集客することも多いでしょう。
広告媒体が変われば法律を気にしなくてよいわけではありません。
インフルエンサーなど第三者を利用した広告についても、広告であることを隠すステルスマーケティングが景品表示法上の規制対象となっているため注意が必要です。
価格や割引表示で注意したいポイント
「通常価格10,000円→本日限定5,000円」といった表示は、購入を促す効果があります。
しかし、「通常価格」として表示した価格で実際には販売した実績がないなど、比較の根拠が適切でなければ不当な二重価格表示となる可能性があります。
セールやキャンペーンを実施するときは、割引率だけでなく、比較対象となる価格が適切かどうかも確認しましょう。
注意点3|利用規約・プライバシーポリシーを整備する
ネット通販を運営すると、購入者との契約だけでなく、氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報を取り扱うことになります。
そのため、販売条件だけでなく、利用規約やプライバシーポリシーなどについても検討することが大切です。
ネットショップで利用規約を作成するメリット
利用規約には、サービスの利用条件や禁止事項、契約に関するルールなどを定めます。
事前にルールを明確にしておくことで、
・注文の成立時期
・キャンセルの扱い
・禁止行為
・サービスの変更や停止
・知的財産権の扱い
などについて、利用者との認識の違いを減らすことにつながります。
ただし、利用規約に記載すればどのような内容でも有効になるわけではありません。
消費者契約法をはじめとする強行法規に反する条項などは、その全部または一部が無効となる場合があります。
個人情報を取り扱う際に確認したいポイント
ネット通販では、商品の配送などのために顧客の個人情報を取得します。
個人情報を取り扱う事業者は、個人情報保護法などに基づき適切に管理する必要があります。
特に、個人情報を何のために利用するのかを明確にすることや、安全管理のために必要な措置を講じることなどが重要です。
プライバシーポリシーを作成するときも、他社サイトの文章をそのままコピーするのではなく、自社が実際に行っている個人情報の取扱いと内容を一致させましょう。
自社のサービス内容に合わせた規約を作成する
ネット上には利用規約やプライバシーポリシーのテンプレートが多数公開されています。
テンプレートは項目を整理する参考にはなりますが、事業内容は会社ごとに異なります。
定期購入なのか単品販売なのか、会員登録が必要なのか、デジタルコンテンツを扱うのかなどによって、必要な規定も変わります。
自社の取引の流れを整理したうえで、実態に合った規約を整備することが重要です。
注意点4|販売する商品に許認可が必要か確認する
ネット通販だからといって、実店舗で必要となる許認可がすべて不要になるわけではありません。
販売する商品によっては、事前に許可や届出などが必要になる場合があります。
ネット通販でも許認可が必要になるケースがある
許認可の要否は、「インターネットで売るか」だけでなく「何を、どのような方法で取り扱うか」によって判断する必要があります。
特に、
・中古品
・酒類
・食品
・医薬品等
などを扱う場合には注意が必要です。
事業開始後に許認可の問題が判明すると、販売計画そのものを変更しなければならない可能性があります。
ネットショップの制作を進める前に、取り扱う商品ごとの規制を確認しておくとよいでしょう。
中古品販売と古物商許可
中古品を仕入れてネット通販で販売するビジネスでは、古物営業法に基づく古物商許可が必要になるケースがあります。
たとえば、中古ブランド品や中古家電、古本などを仕入れて継続的に販売する場合には、許可の要否を確認する必要があります。
古物商許可の申請先は、主たる営業所の所在地を管轄する警察署を経由した都道府県公安委員会となります。
横浜市内に主たる営業所を置いて中古品販売を始める場合は、所在地を管轄する警察署などに確認しながら手続きを進めることが重要です。
酒類・食品などを販売する場合の注意点
酒類を継続的に販売する場合には、販売方法などに応じた酒類販売業免許が必要となることがあります。
食品についても、製造・加工する食品や営業形態などによって食品衛生法上の営業許可や届出が必要となる場合があります。
横浜市で食品を製造・販売するネットショップを開業する場合は、営業施設を管轄する保健所等に必要な手続きを確認することが大切です。
「ネットだけで販売するから許可は不要」と自己判断しないようにしましょう。
注意点5|契約・返品・顧客トラブルへの備えをする
ネット通販では、購入者と直接会わずに契約が成立するため、販売条件を明確にしておくことが特に重要です。
ネット通販では「返品できる・できない」を明確にする
返品については、
・購入者都合の返品は可能か
・返品できる期間
・返品時の送料を誰が負担するか
・不良品の場合の対応
・返品できない商品の条件
などを事前に整理しておきましょう。
返品ルールが曖昧だと、購入者とのトラブルにつながりやすくなります。
特定商取引法上の通信販売に関する返品ルールも踏まえながら、自社の条件を適切に表示することが重要です。
注文・決済・キャンセルに関するルールを整理する
ネット通販では、「注文ボタンを押した時点」「ショップから確認メールが届いた時点」など、どの段階で契約が成立するのかをめぐって問題になることがあります。
また、在庫切れ、価格の誤表示、購入者による入力ミスなども想定しておく必要があります。
利用規約や販売条件を作成する際は、実際の注文から発送までの流れを確認しながらルールを決めることが重要です。
さらに、最終確認画面の表示についても特定商取引法上の規制があるため、ネットショップの画面設計を含めて確認しておきましょう。
トラブル発生前に販売条件を明確にしておく
ネット通販法務では、「トラブルが発生してから対応する」だけでなく、「トラブルが起きにくい仕組みを作る」という視点が重要です。
商品の説明、価格、送料、発送時期、返品条件、キャンセル条件などについて、購入者が契約前に確認できるよう整理しておきましょう。
法務とサイト設計を別々に考えず、購入者が実際に見る画面を確認することもポイントです。
横浜市でネット通販を運営する際に確認したいポイント
横浜市でネット通販を始める場合も、基本的には国の法律に基づいて法務対策を進めます。
一方、許認可の種類によっては、横浜市、神奈川県、警察署、税務署など、事業内容に応じた行政機関への確認や手続きが必要になる場合があります。
横浜市でネットショップを開業する事業者が確認すべきこと
まず、「何を販売するのか」を具体的に整理しましょう。
同じネットショップでも、オリジナル雑貨を販売する場合と、中古品、食品、酒類などを販売する場合では、確認すべき法令や許認可が異なります。
次に、
・商品の仕入方法
・保管場所
・製造や加工の有無
・販売対象
・決済方法
・配送方法
などを整理します。
事業の全体像を明確にすることで、必要な手続きを判断しやすくなります。
店舗販売とネット通販を併用する場合の注意点
横浜市内の実店舗で販売しながら、ネットショップでも販売するケースもあります。
この場合、実店舗で取得している許認可がネット販売にもそのまま対応できるとは限りません。
販売方法の追加によって別の手続きや変更届などが必要になる場合もあるため、既存の許認可の内容を確認しましょう。
事業拡大に伴い必要な許認可や規約を見直す
ネット通販事業は、開始時と数年後で事業内容が大きく変わることがあります。
取扱商品を増やしたり、定期購入サービスを導入したり、新たな販売方法を始めたりした場合には、法務面も見直す必要があります。
「開業時に一度確認したから大丈夫」と考えず、事業内容の変更に合わせて定期的に確認することが大切です。
H2:行政書士にネット通販の法務を相談するメリット
ネット通販には複数の法律が関係するため、「自分の事業では何を確認すればよいかわからない」という方もいるでしょう。
そのような場合には、相談内容に応じて行政書士などの専門家を活用する方法があります。
許認可が必要かどうかを整理できる
行政書士は、官公署に提出する許認可申請書類の作成や、その提出手続の代理などを取り扱う専門家です。
ネット通販で中古品や一定の商品を取り扱う場合など、許認可が関係する事業では、行政書士へ相談することで必要な手続きを整理しやすくなります。
ただし、許認可の種類によって制度や申請先は異なります。
事業内容を具体的に伝えたうえで確認することが重要です。
利用規約などの書類作成を相談できる
行政書士は、その業務範囲において、権利義務または事実証明に関する書類の作成などを行います。
ネット通販に関連する契約書や利用規約等についても、内容によって行政書士に書類作成を相談できる場合があります。
一方、具体的な紛争が発生しているケースや法律事件に関する法律事務など、行政書士が取り扱えない業務もあります。
トラブルの内容によっては弁護士など、適切な専門家への相談が必要です。
ネット通販開始前に法務面の不安を整理できる
ネット通販では、ショップ公開直前になって、
「特商法のページを作っていなかった」
「この商品に許可が必要なのかわからない」
「返品規定を決めていなかった」
と気付くケースもあります。
ネットショップの準備段階で法務面を確認しておけば、必要な手続きや表示を整理したうえで開業を進めやすくなります。
横浜市でネット通販事業を検討している方は、サイト制作と並行して法務面の準備も進めることをおすすめします。
横浜市のネット通販法務に関するよくある質問
最後に、ネット通販を始める際によくある疑問について解説します。
個人でネット通販を始める場合も特商法の表示は必要ですか?
個人で運営しているという理由だけで、一律に特定商取引法の対象外になるわけではありません。
実際の販売方法や活動状況などから、同法上の「販売業者」に該当するかを判断する必要があります。
継続的にネット通販事業を行う場合には、特定商取引法の通信販売に関するルールを確認しましょう。
自宅住所をネットショップに掲載する必要はありますか?
通信販売では、事業者の住所など法令で定められた事項の表示が原則として必要になります。
一方、一定の要件を満たす場合に一部の表示を省略できる仕組みもあります。
利用しているECサービスの機能だけで判断せず、特定商取引法上の要件を確認してください。
ネット通販を始めるために許可や届出は必要ですか?
一般的な商品をネット通販で販売することだけを理由として、すべての事業者に共通する「ネットショップ営業許可」のような許可が必要になるわけではありません。
ただし、中古品、酒類、食品など、取り扱う商品や営業方法によって許認可等が必要になる場合があります。
何をどのような形で販売するのかを整理したうえで判断することが大切です。
利用規約やプライバシーポリシーは必ず必要ですか?
利用規約については、あらゆるネット通販事業者に対して「利用規約」という名称の文書作成を一律に義務付けるものではありません。
ただし、取引条件を明確にし、トラブルを予防する観点から、事業内容に応じた規約を整備することには大きな意味があります。
また、個人情報を取り扱う場合には個人情報保護法上の義務を確認する必要があります。
「規約のページを作れば終わり」ではなく、実際の運用が法律や記載内容と一致していることが重要です。
まとめ|横浜市でネット通販を始めるなら法務対策を確認しよう
ネット通販は手軽に始められる一方、事業者として守らなければならないルールがあります。
特に確認しておきたいのは、次の5つです。
1.特定商取引法に基づく表示
2.景品表示法などを踏まえた広告表現
3.利用規約や個人情報の取扱い
4.販売商品に関係する許認可
5.契約・返品・キャンセルなどのルール
重要なのは、ネットショップを公開してから法務対応を考えるのではなく、事業を始める段階で確認することです。
特に中古品、酒類、食品などを取り扱う場合には、販売開始前に許認可等の要否を確認しておきましょう。
横浜市でネット通販・EC事業の開業を検討しており、「どのような許認可が必要なのかわからない」「事業開始に向けて必要な書類を整理したい」という場合には、行政書士への相談も選択肢の一つです。
事業内容に応じて必要な法務対策を整理し、安心してネット通販を運営できる体制を整えていきましょう。
