横浜市で飲食店や事務所などを開業するとき、「消防計画の届出は必要なのだろうか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
消防計画は、火災が発生した際の被害を防ぐため、防火管理について必要な事項を定めるものです。
ただし、すべての店舗や事業所で一律に消防計画の作成・届出が必要になるわけではありません。
建物の用途や収容人員、防火管理者の選任義務などによって判断する必要があります。また、ビルの一室を借りて営業するテナントの場合でも、消防計画への対応が必要になることがあります。
この記事では、横浜市で店舗や事業所を開設する方に向けて、消防計画の届出が必要となる基本的な考え方や手続きの流れ、注意点について行政書士がわかりやすく解説します。
消防計画とは?横浜市で事業所・店舗を開業する前に確認
消防計画とは、建物や事業所における防火管理を適切に行うための計画です。
火災を未然に防止するための日常的な管理だけでなく、万が一火災などが発生した場合の初期消火、通報、避難誘導などについても定めます。
横浜市で店舗や事業所を開業する場合には、物件を契約して営業許可などの手続きを進めるだけでなく、消防法上どのような手続きが必要になるのかも確認しておくことが重要です。
消防計画の目的と定める主な内容
消防計画の大きな目的は、火災を予防するとともに、火災などが発生した場合に人命や財産への被害をできる限り防ぐことです。
消防計画には、建物や事業所の状況に応じて、防火管理業務の実施体制、火気の管理、消防用設備等の点検、避難経路の維持管理、火災発生時の対応、消防訓練などに関する事項を定めます。
単に消防署へ提出するためだけの書類ではなく、「この店舗・事業所で火災が起きた場合に、誰が何をするのか」を具体的に決めておくための重要な計画と考えるとわかりやすいでしょう。
防火管理者と消防計画の関係
消防計画を理解するうえで重要なのが「防火管理者」です。
一定の防火対象物では、管理について権原を有する者が、資格を有する者の中から防火管理者を選任し、防火管理に必要な業務を行わせることが消防法で求められています。
防火管理者は、防火管理に係る消防計画を作成し、その計画に基づいて消火・通報・避難訓練の実施、消防用設備等の点検・整備、火気の使用または取扱いに関する監督などを行います。
そのため、「消防計画が必要か」を判断するときには、防火管理者の選任が必要となる防火対象物かどうかを確認することが重要なポイントになります。
消防計画を作成したら消防署への届出が必要
防火管理者を選任した場合は、選任した旨を所轄消防署長へ届け出ます。
さらに、防火管理者が消防計画を作成した場合にも、所定の届出が必要です。
横浜市で店舗・事業所を開業する場合は、「消防計画を作って保管しておけばよい」と考えるのではなく、必要な届出まで含めて確認しておきましょう。
横浜市で消防計画の届出が必要となる事業所・店舗
「何坪以上なら消防計画が必要ですか?」という質問を受けることがありますが、床面積だけで一律に判断できるものではありません。
消防法では、建物の用途や収容人員などによって防火管理者の選任が必要かどうかが決まります。
特に、飲食店や物販店など不特定多数の人が利用する施設では、オフィスなどと基準が異なる場合があるため注意しましょう。
消防計画が必要になる建物・事業所の基本的な考え方
消防計画の必要性を確認する際には、まず防火対象物の用途と収容人員などを確認します。
たとえば、飲食店や物品販売店舗、ホテル、病院など、不特定多数の人や避難上の配慮が必要な人が利用する一定の防火対象物では、収容人員30人以上が防火管理者選任の一つの基準となります。
一方、共同住宅、学校、工場、事務所など一定の防火対象物では、収容人員50人以上が一つの基準です。
また、老人短期入所施設など、自力で避難することが困難な方が入所する一定の社会福祉施設等が含まれる防火対象物については、収容人員10人以上が基準となる場合があります。
実際の判定では用途や建物全体の状況などを確認する必要があるため、人数だけを見て判断しないことが重要です。
飲食店・物販店・事務所など用途による違い
消防法上の用途区分は、消防計画の必要性を判断する重要なポイントです。
たとえば、同じ広さの物件であっても、飲食店として使用する場合と事務所として使用する場合では、防火管理者の選任義務に関する基準が異なる可能性があります。
「前のテナントでは問題なかったから、自分の店舗でも同じ」とは限りません。
横浜市で居抜き物件などを利用して開業する場合も、これから行う事業の用途を前提として確認しましょう。
収容人員によって防火管理者の選任が必要になるケース
防火管理者の選任義務を判断するときに重要なのが「収容人員」です。
収容人員は、単純に従業員の人数だけを数えるとは限りません。
用途に応じて、従業者、客席、利用者などについて消防法令上の算定方法が定められています。
たとえば飲食店の場合、「スタッフが10人しかいないから30人未満」と単純に判断することはできません。客席なども含め、所定の方法で収容人員を算定する必要があります。
開業予定の店舗が基準付近にある場合は、自己判断せず管轄消防署などに確認することをおすすめします。
テナント入居でも消防計画が必要になることがある
商業ビルや雑居ビルの一室を借りて店舗を開業する場合、「建物の消防関係はオーナーや管理会社が対応しているから、自分には関係ない」と思われることがあります。
しかし、テナント側にも管理について権原があり、防火管理者の選任や消防計画への対応が必要となる場合があります。
複数のテナントが入居する建物では、建物全体の防火管理と各テナントの防火管理が関係するため、より慎重な確認が必要です。
物件を契約する際には、ビルの管理会社やオーナーに消防関係の管理状況を確認するとともに、必要に応じて管轄消防署へ相談すると安心です。
横浜市で消防計画を届け出るまでの流れ
消防計画の届出が必要となる場合、一般的には次のような流れで準備を進めます。
開業直前になって消防関係の手続きが未了であることに気付くと、スケジュールに影響する可能性があります。
飲食店などの新規開業では、物件や内装工事の検討段階から消防関係の確認を行うことが重要です。
①建物の用途・収容人員などを確認する
最初に、店舗や事業所が消防法上どの用途に該当するのか、収容人員が何人になるのかなどを確認します。
建物全体の用途やテナント構成についても確認が必要になる場合があります。
特に複合用途の建物では、自分の店舗だけを見て判断できないこともあるため注意しましょう。
②防火管理者を選任する
防火管理者の選任が必要な場合は、防火管理者となるための資格を有する人の中から選任します。
建物の規模や用途などによって、甲種防火管理者または乙種防火管理者など、必要となる資格の確認も必要です。
社内に資格を有する人がいない場合には、防火管理講習の受講スケジュールなども考慮し、早めに準備を進める必要があります。
③消防計画を作成する
防火管理者を選任したら、店舗や事業所の実情に応じて消防計画を作成します。
消防計画は、ひな形をそのまま提出すればよいというものではありません。
従業員体制や建物の設備、避難経路、火気設備の使用状況などは事業所ごとに異なるため、実際の店舗・事業所の状況を反映させる必要があります。
④管轄する消防署へ必要書類を届け出る
消防計画を作成したら、必要な書類を管轄消防署へ届け出ます。
横浜市には各区を管轄する消防署がありますので、店舗・事業所の所在地を管轄する消防署を確認しましょう。
また、消防計画以外にも、防火管理者の選任に関する届出や、店舗の使用開始、設備などに関係する消防関係の届出が必要になることがあります。
開業時には消防計画だけを個別に考えるのではなく、必要な消防関係手続きをまとめて確認することが大切です。
消防計画には何を書く?主な記載事項
消防計画には、防火管理を実施するために必要な事項を具体的に記載します。
店舗や事業所によって内容は異なりますが、主な項目について確認しておきましょう。
防火管理者や自衛消防組織に関する事項
火災などが発生したときに、誰が通報し、誰が初期消火を行い、誰が避難誘導を担当するのかなど、役割分担を定めます。
実際に火災が発生してから役割を決めるのでは対応が遅れてしまうため、平常時から体制を整えておくことが重要です。
火災予防のための日常的な点検・管理
消防用設備等の維持管理、避難経路や防火戸などの管理、火気使用設備の管理など、日常的な火災予防に関する事項を定めます。
たとえば飲食店では火気を使用することが多いため、厨房設備周辺の管理なども重要になります。
火災発生時の通報・初期消火・避難誘導
火災が発生した場合の119番通報、初期消火、利用客や従業員の避難誘導などについて定めます。
特に不特定多数の利用客がいる店舗では、従業員が避難経路を理解し、迅速に誘導できる体制を整えておく必要があります。
消防訓練や教育に関する事項
消防計画では、消火・通報・避難などの訓練や、防火管理に関する従業員教育についても定めます。
消防計画は提出して終わりではありません。
計画に基づいて必要な訓練や防火管理業務を継続して実施することが重要です。
横浜市で消防計画を届け出る際の注意点
横浜市で消防計画に関する手続きを行う際は、消防計画だけに注目すると必要な手続きを見落としてしまう可能性があります。
特に新規開業やテナント入居の場合は、次のポイントに注意しましょう。
消防計画だけでなく防火管理者選任届が必要になる場合がある
防火管理者を選任した場合には、その旨を所轄消防署長へ届け出る必要があります。
そのため、防火管理者の選任が必要な店舗・事業所では、消防計画に関する届出とあわせて必要書類を確認しましょう。
店舗の用途や規模だけでは判断できない場合がある
消防計画が必要かどうかについて、「飲食店だから必要」「小さい店舗だから不要」といった単純な判断は避けましょう。
用途、収容人員、建物の構造や規模、建物全体の利用状況など、複数の要素が関係する可能性があります。
判断が難しい場合には、店舗の平面図や建物に関する資料などを準備したうえで、管轄消防署に相談するとスムーズです。
建物全体とテナントそれぞれの消防計画を確認する
テナントビルの場合には、建物全体について防火管理体制が構築されていることがあります。
しかし、それだけを理由に各テナントの手続きが不要になるとは限りません。
オーナーや管理会社に任せきりにせず、自社・自店舗について必要な手続きがないか確認しましょう。
開業時には消防計画以外の消防関係手続きも確認する
新しく店舗を開業するときには、消防計画以外にも消防法令や横浜市の条例等に基づく手続きが関係することがあります。
また、飲食店であれば保健所への飲食店営業許可申請、深夜に酒類を提供する場合には警察への届出など、営業形態に応じて別の行政手続きが必要になることもあります。
開業日から逆算し、「消防署」「保健所」「警察署」などへの手続きを整理しておくとよいでしょう。
横浜市の店舗・事業所でよくある消防計画のケースを行政書士が解説
ここからは、横浜市で店舗や事業所を開設する場合を想定して、消防計画について確認したい代表的なケースをご紹介します。
ケース① 飲食店を新しく開業する場合
飲食店は不特定多数のお客様が利用するため、消防法上の用途や収容人員について特に確認しておきたい業態です。
客席数だけで自己判断するのではなく、消防法令上の収容人員を算定し、防火管理者の選任が必要か確認します。
また、厨房で火気設備を使用する場合などは、消防計画以外の消防関係手続きについても確認しておきましょう。
ケース② オフィス・事務所を開設する場合
事務所についても、一定の要件に該当すれば防火管理者の選任が必要になります。
「一般の来客が少ないオフィスだから消防計画は関係ない」とは限りません。
従業員数や建物全体の用途などを確認し、必要な防火管理体制を整えましょう。
ケース③ 商業ビルのテナントとして入居する場合
商業ビルへのテナント入居では、ビル全体の消防計画や防火管理体制との関係を確認する必要があります。
特に複数の事業者が入居する建物では、管理権原が分かれていることもあります。
契約前または内装工事の開始前に、ビル管理会社と消防関係の手続きについて打ち合わせておくことをおすすめします。
ケース④ 既存店舗の用途や責任者が変わった場合
新規開業時だけでなく、既存店舗の営業内容を変更した場合や、防火管理者が退職・異動した場合などにも確認が必要です。
防火管理者が変更された場合には、新しい防火管理者の選任に関する届出などが必要になります。
店舗の状況に変更が生じた場合は、「以前届出をしたから大丈夫」と考えず、変更に伴う手続きが必要か確認しましょう。
横浜市の消防計画に関するよくある質問
最後に、店舗・事業所の方から相談を受けやすい消防計画の疑問について解説します。
小さな店舗でも消防計画は必要ですか?
店舗の床面積が小さいという理由だけで、消防計画が不要とは判断できません。
防火管理者の選任義務は、用途や収容人員などの条件によって判断します。
特に飲食店などでは従業員だけでなく利用客なども収容人員の算定に関係するため、具体的な状況を確認する必要があります。
消防計画は自分で作成できますか?
消防計画は、法令上必要な内容を理解したうえで、実際の店舗・事業所の状況を反映して作成する必要があります。
横浜市が公開している様式や作成例などを確認しながら準備する方法もあります。
ただし、どの様式を使用すればよいかわからない場合や、自社がどの区分に該当するのか判断できない場合には、管轄消防署や消防関係手続きに詳しい専門家へ確認するとよいでしょう。
消防計画はいつまでに届け出ればよいですか?
防火管理者を選任し、消防計画を作成する必要がある場合は、法令上の届出時期を確認し、遅滞なく必要な手続きを行うことが重要です。
開業の場合には、実際の営業開始後に慌てて準備するのではなく、開業スケジュールの中に消防関係手続きを組み込んでおきましょう。
届出先は横浜市役所ですか?消防署ですか?
消防計画に関する届出については、店舗・事業所を管轄する消防署が窓口となります。
横浜市には各区を管轄する消防署があります。
店舗の所在地に応じて管轄を確認し、必要書類や提出方法について事前に確認するとスムーズです。
防火管理者が変更になった場合はどうすればよいですか?
防火管理者が退職や異動などによって変更になる場合は、新たな防火管理者を選任し、必要な届出を行います。
また、防火管理者の変更に伴い、既存の消防計画について見直しが必要になる場合もあります。
人事異動が多い事業所では、防火管理者が不在の状態にならないよう管理しておくことが大切です。
消防計画などの消防関係手続きを行政書士に相談するメリット
店舗の開業では、物件探し、内装工事、採用、仕入れ、営業許可など、多くの準備を同時並行で進めなければなりません。
消防関係の手続きまで事業者自身ですべて調査することが負担になるケースもあります。
そのような場合には、消防関係の行政手続きに対応している行政書士への相談を検討する方法があります。
店舗・事業所に必要な消防関係手続きを整理できる
消防関係の手続きでは、消防計画だけを提出すればよいとは限りません。
店舗の用途や設備、工事内容などによって必要な確認事項や届出が異なります。
行政書士に相談することで、店舗の状況を整理し、どのような行政手続きについて確認する必要があるのかを把握しやすくなります。
消防計画などの書類作成をスムーズに進められる
消防計画には、店舗の実態に合わせた内容を記載する必要があります。
書類作成に慣れていない場合、「どこまで書けばよいかわからない」「自分の店舗に当てはまる項目がわからない」と迷うこともあるでしょう。
消防関係手続きを取り扱う行政書士へ依頼することで、必要事項を整理しながら書類作成を進めることができます。
なお、行政書士が対応できる具体的な業務範囲については、個別の手続き内容や他士業の業務範囲との関係を確認する必要があります。
飲食店営業許可など開業時の行政手続きとあわせて相談できる
行政書士に相談するメリットの一つが、開業に必要となる複数の行政手続きをまとめて整理しやすいことです。
たとえば飲食店を開業する場合には、飲食店営業許可をはじめ、営業内容によってさまざまな行政手続きが関係します。
「どの手続きを、いつまでに、どの行政機関へ行えばよいのか」を開業スケジュールに沿って整理できれば、手続きの漏れを防ぎやすくなります。
まとめ|横浜市で消防計画が必要か開業前に確認しよう
横浜市で店舗や事業所を開業する場合、一定の要件に該当すると防火管理者の選任や消防計画の作成・届出が必要になります。
重要なのは、店舗の広さだけで「必要・不要」を判断しないことです。
飲食店、物販店、事務所などの用途や収容人員、建物全体の状況などを確認し、防火管理者の選任義務があるかを判断する必要があります。
また、テナントとしてビルに入居する場合でも、消防計画などの対応が必要になる可能性があります。
横浜市で店舗・事業所の開業を予定している方は、物件契約や内装工事を進める段階から、管轄消防署への確認を含めて消防関係の手続きを整理しておくことをおすすめします。
消防計画をはじめとする書類の作成方法がわからない場合や、開業に必要な行政手続きをまとめて確認したい場合は、消防関係・許認可手続きを取り扱う行政書士への相談もご検討ください。
