「民間企業だけでなく、官公庁のシステム開発やIT関連業務も受注したい」
「公共入札に興味はあるものの、何から準備すればよいかわからない」
このように考えているIT企業は少なくないのではないでしょうか。
国や地方自治体では、システム開発・改修、システム運用、Webサイト制作、ネットワーク構築、IT機器の調達、DX支援など、IT企業が参入を検討できるさまざまな案件が発注されています。
しかし、公共入札は、参加したい案件を見つけて、その場ですぐに入札できるとは限りません。
発注機関や案件によっては、あらかじめ「入札参加資格」を取得しておく必要があります。
特に神奈川県のIT企業が公共案件への参入を考える場合、
・国の機関を対象とする「全省庁統一資格」
・神奈川県などの「競争入札参加資格」
・横浜市や川崎市など各自治体の入札参加資格
といった違いを理解しておくことが大切です。
この記事では、神奈川県のIT企業が公共入札に進出するための基本的な考え方や入札参加資格について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
IT企業にとっての「入札案件」とは
官公庁や地方自治体も、民間企業と同じように、業務に必要な商品やサービスを外部事業者から調達しています。
その際に利用される契約方法の一つが「入札」です。
公共調達というと、道路工事や公共施設の建設などをイメージする方もいるかもしれません。
しかし、実際にはIT関連の業務も数多く存在します。
例えば、
・業務システムの開発・改修
・既存システムの運用・保守
・サーバーやネットワークの構築
・Webサイトの制作・リニューアル
・クラウドサービスの導入
・パソコンやタブレットなどの調達
・ソフトウェアライセンスの調達
・情報セキュリティ関連業務
・データ処理やデータ入力
・DX推進に関する支援
などです。
案件によっては価格だけで落札者を決定するものだけでなく、企画内容や技術力などを含めて事業者を選定するプロポーザル方式等が採用されることもあります。
そのため、自社の技術や実績に合った案件を探すことが、入札市場への参入における第一歩となります。
IT企業が公共入札に参入する3つのメリット
国・自治体という新しい取引先を開拓できる
公共入札に取り組む大きなメリットの一つは、これまで民間企業を中心に営業していたIT企業が、国や自治体などにも取引先候補を広げられることです。
特定の民間企業や業界に売上が偏っている会社であれば、販路を広げる選択肢の一つになります。
中小IT企業でも参加を検討できる案件がある
「官公庁案件は大手企業しか受注できない」と考えている方もいるかもしれません。
確かに、大規模システムなどでは高度な実績や体制を求められる場合があります。
一方、公共調達の内容や規模はさまざまです。
重要なのは、会社の規模だけで判断するのではなく、公告や仕様書などを確認して、自社が参加条件を満たす案件を探すことです。
公共案件の実績を営業に活用できる可能性がある
公共案件を受注し、適切に履行することは、その後の入札参加を検討するうえでも重要な実績となります。
ただし、案件によって参加資格や要求される実績は異なります。
「一度公共案件を受注すれば、その後の入札が簡単になる」というものではありませんので、案件ごとに条件を確認しましょう。
まず知っておきたい「入札参加資格」とは
IT企業が公共入札への参入を考える際に、最初に理解しておきたいのが「入札参加資格」です。
国や自治体では、競争入札に参加する事業者について一定の資格審査を行い、有資格者として登録する制度を設けています。
ここで特に注意したいのは、入札参加資格は全国すべての官公庁・自治体で一つに統一されているわけではないということです。
例えば、
「全省庁統一資格を取得したから神奈川県の案件にも参加できる」
「神奈川県の資格を取得したから横浜市のすべての案件にも参加できる」
とは限りません。
発注機関によって利用する資格制度が異なるため、まず「どこの案件を狙うのか」を決め、その発注機関で必要になる資格を調べる必要があります。
国のIT案件を狙うなら「全省庁統一資格」を確認
神奈川県のIT企業が国の機関との取引を目指す場合、まず確認したいのが「全省庁統一資格」です。
全省庁統一資格とは、国の各省庁等における物品の製造・販売や役務の提供等に関する一般競争・指名競争への参加資格です。
一つの省庁だけで利用する資格ではなく、国の機関への入札参加を考える企業にとって重要な資格となります。
IT企業の場合には、特に「役務の提供等」など、自社が提供するサービスに対応する資格・営業品目を確認することがポイントです。
例えば、情報システム関連の役務など、自社が狙いたい案件に対応した営業品目を検討します。
ただし、全省庁統一資格を取得しただけで、国が発注するすべてのIT案件に無条件で参加できるわけではありません。
個別案件では、
・資格の種類
・等級
・競争参加地域
・営業品目
・過去の業務実績
・技術者等の体制
・情報セキュリティに関する条件
などが別途定められている場合があります。
したがって、「全省庁統一資格の取得」と「個別案件の参加要件を満たすこと」は分けて考える必要があります。
神奈川県の入札参加資格と全省庁統一資格は何が違う?
入札初心者のIT企業からよく聞かれるのが、
「全省庁統一資格を取得すれば、神奈川県の入札にも参加できますか?」
という質問です。
基本的には、「国」と「地方自治体」は分けて考えるとわかりやすいでしょう。
全省庁統一資格は、国の各省庁等における物品・役務等の競争契約に参加するための資格です。
一方、神奈川県や県内市町村の案件に参加する場合には、それぞれの発注機関が指定する競争入札参加資格を確認する必要があります。
つまり、国と神奈川県内の自治体の双方を営業対象にするIT企業であれば、
「全省庁統一資格+自治体側で必要となる入札参加資格」
という形で準備することが考えられます。
営業戦略を立てる段階で、どの資格が必要になるのかを整理しておくと効率的です。
神奈川県のIT企業が入札案件に進出する5つのステップ
ステップ1|国・県・市町村のどこを狙うか決める
最初から「取れる資格は全部取ろう」と考える必要はありません。
まず、自社のサービス内容から、
・国の機関
・神奈川県
・横浜市
・川崎市
・相模原市
・その他の県内市町村
など、どの発注機関を営業対象にするか検討します。
営業対象が決まれば、必要な資格や探すべき案件も明確になります。
ステップ2|自社のITサービスに合った案件を調査する
次に行いたいのが過去案件の調査です。
自社が提供しているサービスと近い案件について、
・どの発注機関が発注しているか
・どのような仕様になっているか
・どの程度の実績が求められているか
・どのような企業が受注しているか
・どの程度の金額で落札されているか
などを調べます。
ここで重要なのは、「資格を取ってから案件を探す」のではなく、可能であれば「狙いたい案件を調べてから必要な資格を取る」という順序で考えることです。
ステップ3|必要な入札参加資格を確認・申請する
ターゲットとなる発注機関が決まったら、必要となる入札参加資格を確認します。
国の物品・役務等であれば全省庁統一資格、神奈川県や市町村であれば各発注機関が指定する資格を確認します。
申請では会社情報だけでなく、財務情報や納税関係の書類などが必要になることがあります。
申請から資格取得まで時間を要する可能性もあるため、参加したい案件の公告を見つけてから慌てて準備するのではなく、余裕を持って進めましょう。
ステップ4|電子入札などの利用環境を整える
資格を取得しただけでは準備完了とは限りません。
発注機関によっては電子入札システムを利用するための準備も必要になります。
神奈川県などが利用する「かながわ電子入札共同システム」は、資格申請、電子入札、入札情報の確認などを行うための仕組みです。
利用するシステムによって必要な設定等が異なるため、資格申請と並行して確認しておくことをおすすめします。
ステップ5|案件を継続的に探して入札に参加する
公共入札では、資格取得そのものが目的ではありません。
資格を取得した後に重要になるのが、継続的な案件情報の収集です。
自社のサービスに関連するキーワードや発注機関を決め、定期的に公告を確認する体制をつくりましょう。
神奈川県のIT企業が狙える入札案件の具体例
神奈川県内でもIT関連の公共調達は実際に行われています。
例えば横浜市では、情報公開システムの開発業務について、令和7・8年度横浜市一般競争入札有資格者名簿の「コンピュータ業務」における「ソフトウエア開発・改修」「システム運用・監視」への登録などを参加資格とした案件が公表されています。
このように「IT案件」と一言でいっても、案件によって求められる登録種目や細目は異なります。
IT企業が検討できる分野としては、
・システム開発
・システム改修
・システム運用・保守
・Webサイト関連業務
・ネットワーク関連業務
・クラウド関連業務
・情報セキュリティ関連業務
・パソコンやタブレット等の物品調達
・ソフトウェア等の調達
・データ処理
・DX支援
などが考えられます。
自社が「システム会社だから」という理由だけで資格区分を決めるのではなく、実際に受注したい案件の参加条件から逆算して登録内容を検討することが大切です。
神奈川県のIT企業が入札案件を探す方法
神奈川県・かながわ電子入札共同システムを確認する
神奈川県内の公共入札を検討する場合は、「かながわ電子入札共同システム」を確認しておきましょう。
同システムには、競争入札参加資格の申請等を行う「資格申請システム」、入札書の提出等を行う「電子入札システム」、公告や資格者名簿等を確認できる「入札情報サービスシステム」があります。
神奈川県のほか、相模原市、横須賀市、藤沢市、厚木市など、多くの県内自治体・団体が共同運営に参加しています。
ただし、神奈川県内のすべての自治体が同じ仕組みを利用しているわけではありません。
横浜市・川崎市などは個別に確認する
ここは神奈川県のIT企業が特に注意したいポイントです。
横浜市や川崎市は、かながわ電子入札共同システムの共同運営参加団体一覧には含まれていません。
例えば横浜市では、横浜市独自の有資格者名簿・電子入札制度が運用されています。
令和7・8年度については、入札参加資格審査の随時申請も行われています。
川崎市についても独自の競争入札参加資格者名簿・業者登録制度があります。
そのため、「神奈川県の資格を取ったから、県内の自治体は全部カバーできる」と考えないようにしましょう。
国の調達情報もチェックする
全省庁統一資格を取得して国の案件への参入を考える場合は、国の調達情報も継続して確認します。
神奈川県内に本社があるIT企業であっても、営業対象を神奈川県内の自治体だけに限定する必要はありません。
自社のサービスが場所を問わず提供できるのであれば、国の案件を含めて検討することで、公共市場への入口を広げることができます。
行政書士が解説|IT企業が入札参入で注意したいポイント
案件を見つけてから資格申請を始める
よくある失敗の一つが、
「良さそうな案件が出てきたので、今から資格を取ろう」
というケースです。
案件には参加申込期限があります。
資格審査や名簿登録が期限までに間に合わなければ、案件への参加が難しくなる場合があります。
公共入札への参入を決めたら、案件が公告される前から必要な資格を準備しておくことが重要です。
全省庁統一資格と自治体の資格を混同する
「入札参加資格」という名称が似ているため、制度を混同しやすいところです。
国の資格、神奈川県等で利用する資格、横浜市や川崎市などの資格は、それぞれ確認が必要です。
複数の発注機関を狙う場合には、「発注機関×必要資格」の一覧を作成すると管理しやすくなります。
営業品目・種目を十分検討せず申請する
IT企業だからといって、すべて同じ区分で登録すればよいわけではありません。
例えば、
「システムを開発する会社」
「IT機器を販売する会社」
「Webサイトを制作する会社」
「ITコンサルティングを行う会社」
では、狙う案件が異なります。
資格申請を行う前に、過去の案件を確認し、自社がどの営業品目・種目を必要とするのか検討することが重要です。
資格を取得すれば受注できると思ってしまう
入札参加資格は、あくまで入札市場への「入口」です。
資格を取得しただけで案件が紹介されたり、自動的に仕事を受注できたりするものではありません。
資格取得後には、
「案件を探す」
↓
「参加条件を確認する」
↓
「仕様書を読み込む」
↓
「採算性を検討する」
↓
「入札・提案する」
という営業活動が必要です。
IT企業が入札参入前に準備しておきたいこと
入札参入を成功させるためには、「資格申請」と「営業戦略」をセットで考えることが大切です。
まず、自社のサービスを公共調達向けに整理してみましょう。
例えば、
「業務システムの受託開発が得意」
「中小規模のWebシステムなら対応できる」
「クラウド移行支援に強い」
「学校・教育分野で導入実績がある」
「情報セキュリティ関連の認証を取得している」
など、自社の強みを明確にします。
次に、その強みを必要としている発注機関や過去案件を探します。
そこで初めて、
「全省庁統一資格を取ろう」
「神奈川県の資格を準備しよう」
「横浜市にも登録しよう」
といった具体的な資格戦略が見えてきます。
「とりあえず資格を取る」のではなく、「案件から逆算して資格を取る」という考え方がポイントです。
入札参加資格申請を行政書士に依頼するメリット
公共入札への新規参入では、
「自社にはどの資格が必要なのか」
「全省庁統一資格と自治体の資格は何が違うのか」
「どの営業品目を選択すればよいのか」
「申請には何を準備すればよいのか」
といった疑問が生じやすいものです。
特に、国と複数の自治体への参入を同時に検討すると、資格制度や申請時期、必要書類などの管理が複雑になります。
行政書士に入札参加資格申請を依頼することで、申請先や必要書類を整理しながら手続きを進めやすくなります。
その結果、IT企業の経営者や担当者は、案件の調査、仕様書の確認、提案内容の検討など、本来注力したい受注活動に時間を使いやすくなります。
まとめ|神奈川県のIT企業は「国+自治体」で入札市場を考えよう
神奈川県のIT企業にとって、公共入札は新たな販路を開拓する選択肢の一つです。
システム開発、運用保守、Web制作、クラウド、ネットワーク、IT機器、DX支援など、自社の事業と関連する公共案件が見つかる可能性があります。
ただし、公共入札に参入するときに重要なのは、「入札資格を取ること」だけではありません。
まず、
「どの発注機関の、どのようなIT案件を受注したいのか」
を明確にすることが重要です。
国の案件であれば全省庁統一資格を確認し、神奈川県や県内市町村の案件であれば、それぞれの発注機関で必要となる資格を確認します。
また、神奈川県内でも、かながわ電子入札共同システムに参加する自治体と、横浜市・川崎市のように独自の制度を運用する自治体があります。
「国+県+市町村」を一つの市場として考えながら、自社が狙う案件から逆算して必要な資格を整えていくことが、効率的な入札参入につながります。
神奈川県のIT企業の入札参加資格申請は行政書士へご相談ください
「全省庁統一資格を取得して国のIT案件に参入したい」
「神奈川県や県内自治体の案件にも参加したい」
「自社の場合、どの入札参加資格が必要なのかわからない」
「どの営業品目・種目を選べばよいのかわからない」
「複数の入札参加資格申請をまとめて進めたい」
このようなお悩みがあるIT企業の方は、当事務所へご相談ください。
公共入札への参入では、資格取得をゴールにするのではなく、その先にある「案件への参加・受注」を見据えて準備することが大切です。
自社のITサービスに適した公共市場を見つけ、国・神奈川県・県内自治体への新たな販路開拓につなげていきましょう。
※本記事は入札制度に関する一般的な情報を提供するものであり、個別案件への参加可否を保証するものではありません。入札参加資格、営業品目、申請期間、必要書類、電子入札の利用条件等は発注機関や時期、個別案件によって異なります。実際に申請・入札を行う際は、各発注機関の最新の公告、申請要領、仕様書等をご確認ください。
