顧問先企業のスタッフの方を対象に、全4回の「AI・IT人材育成研修」の第3回を実施しました。
今回のテーマは、「Google Workspaceで始める、社内情報管理と業務改善」。
第1回では、日々の業務に潜む課題の発見。
第2回では、音声入力やNotebookLMなどを活用した仕事の進め方の見直し。
そして第3回となる今回は、AI活用をさらに進めるための土台となる「社内の情報管理」に焦点を当てました。
今回の研修では、Google Workspaceの基本的な機能や操作方法だけでなく、顧問先企業が実際に取り扱っている図面や行政手続に関する書類などを念頭に、具体的な管理方法やAI活用の可能性についてもお話ししました。
私自身が行政書士として、この顧問先の実務を継続的に支援しているからこそ、一般論にとどまらない、現場の業務に即した研修を行うことができたと考えています。
AIを導入する前に、会社の情報は整理されているか?
生成AIを活用すれば、文章の作成や情報の整理、資料の検索など、さまざまな業務を効率化できます。
しかし、AIを使う以前に、会社の情報管理そのものに課題があるケースも少なくありません。
例えば、
- 必要な図面や資料が、担当者ごとに異なる場所に保存されている。
- 同じ書類が複数存在し、どれが最新版か分からない。
- 会社の業務資料が、社長や社員の個人アカウントで管理されている。
- 書類を誰が更新し、誰が確認するのかが決まっていない。
- 社内で共有してよい情報と、アクセスを制限すべき情報が整理されていない。
こうした状態では、AIを導入しても、その効果を十分に発揮できません。
むしろ、誤った資料を参照したり、機密情報を不適切に取り扱ったりするリスクもあります。
AIを使いこなすためには、まず会社の情報を適切に管理する仕組みが必要です。
今回の研修は、この考え方を出発点としました。
Google Workspaceを中心に、組織として情報を管理する
研修の前半では、Google Workspace、Microsoft 365、Boxという代表的なクラウドサービスの特徴を比較しました。
Google Workspaceは、Gmail、Googleドライブ、Googleドキュメント、カレンダーなどを一体的に利用できる業務環境です。
Microsoft 365は、WordやExcel、OneDrive、SharePointなどを中心とした業務環境。
Boxは、企業向けのファイル共有やコンテンツ管理に強みを持つサービスです。
それぞれに特徴がありますが、重要なのは、どのサービスを使うかだけではありません。
会社の情報を、どこに保存し、誰が管理し、誰に共有するのか。
そのルールを明確にすることが大切です。
また、個人のGoogleアカウントと、企業向けのGoogle Workspaceの違いについても説明しました。
普段の操作画面は似ていますが、Google Workspaceでは、会社が社員のアカウントや共有範囲などを組織として管理できます。
特に、個人が所有するファイルと、組織が所有するファイルの違いは重要です。
Google Workspaceの共有ドライブを適切に活用すれば、担当者の異動や退職があっても、必要な業務資料を組織として引き継ぎやすくなります。
もちろん、共有ドライブに保存すれば何でも安全というわけではありません。
情報の機密性に応じて、アクセス権限や管理方法を決める必要があります。
図面や行政手続の書類を題材に、実務に即した情報管理を考える
今回の研修で特に重視したのは、実際の業務と結びつけて考えることです。
顧問先企業では、日々の業務の中で、建物に関する技術資料や、各種行政手続に必要な書類など、さまざまな書類を取り扱っています。
こうした書類は、単に保存しておけばよいものではありません。
例えば、図面であれば、作成途中のもの、修正したもの、最終的に確認されたものなど、複数のバージョンが存在することがあります。
今回は、こうした実務上の場面を想定しながら、Googleドライブのフォルダ構成やファイル名の付け方、共有権限の考え方について説明しました。
例えば、ファイル名に日付や対象物件、書類の種類などを含めることで、後から必要な資料を探しやすくなります。
また、書類の作成段階や確認状況を明確にしておくことで、古い資料を誤って使用するリスクも減らせます。
一つひとつは小さな工夫ですが、日常的に多くの書類を取り扱う業務では、こうした管理方法の違いが業務効率に大きく影響します。
行政書士として実務を知っているからこそ、具体的なAI活用まで踏み込める
今回の研修には、私自身が行政書士として顧問先企業の業務に関わっていることが、大きく活きています。
私は日頃から、行政手続に関する支援を行っており、実際にどのような書類が必要で、どのような流れで業務が進み、どこに確認や調整の手間が発生するのかを把握しています。
そのため、単に「Googleドライブを使えば便利です」「AIで書類作成を効率化できます」という一般的な説明では終わりません。
例えば、
- 複数の関連資料を、どのような単位で整理すれば探しやすくなるか。
- 行政手続に関する書類の作成・確認状況を、どのように管理すればよいか。
- 過去の資料や社内マニュアルを、AIによる情報整理にどう活かせるか。
- 定型的な報告書や連絡文書の作成を、AIでどこまで効率化できるか。
- AIに任せられる作業と、人が責任を持って確認すべき作業をどう区別するか。
こうした内容を、実際の業務をイメージしながら具体的にお伝えすることができます。
AIが作成した文章や整理結果は、そのまま正しいものとして扱うことはできません。
法令や行政機関の取扱い、原資料との整合性など、必要な確認は人が行う必要があります。
また、申請関係書類には、機密情報や個人情報が含まれる場合もあります。
AIに入力してよい情報かどうかを判断することも欠かせません。
AIを活用できる場面を見極めることと、AIに任せてはいけない部分を理解すること。
その両方が、実務でAIを活用するうえでは大切だと考えています。
AI・IT人材育成の目的は、会社の課題を発見し、改善できる人を育てること
今回の研修で、もう一つ大切にしたのが、受講されるスタッフの方の役割です。
目指しているのは、ITの専門用語をたくさん知っている人でも、すべての技術的な問題を一人で解決できる人でもありません。
自社の業務を理解し、課題を発見し、AIやITを使った改善方法を考え、経営者に提案できる人材です。
中小企業では、社長が日々の経営判断を行いながら、社内のIT環境まで管理していることもあります。
しかし、社員自身が業務の課題に気づき、改善案を考えられるようになれば、社長がすべてを判断し、指示する必要はなくなっていきます。
例えば、
「この書類は共有ドライブで管理した方がよいのではないか」
「毎回作成している報告書は、AIで下書きを作れるのではないか」
「図面や関連書類の保存ルールを統一すれば、確認作業が楽になるのではないか」
そうした提案が、現場から生まれるようになること。
それが、今回の人材育成研修で目指している姿です。
次回はいよいよ最終回。学んだことを経営者への提案につなげる
全4回の研修も、次回が最終回となります。
第4回では、これまで学んだことをもとに、2つの成果報告を行っていただく予定です。
1つ目は「AIを使った業務改善の成果報告」。
議事録や報告書、メール作成など、実際の仕事でAIを活用し、何がどのように変わったのかを整理して発表していただきます。
2つ目は「社内IT環境の改善提案」。
Google Workspaceの運用状況や、社内の情報管理に関する課題を整理し、今後どのような改善に取り組むべきかを経営者に提案していただきます。
大切なのは、研修で学んだ知識を、実際の会社の改善につなげることです。
AIを使ってみて終わり。
便利なツールを知って終わり。
それでは、会社の仕事は大きく変わりません。
自社の課題を発見し、改善方法を考え、実行し、その効果を確かめる。
そうした取り組みを、社内で継続できるようになることが重要だと考えています。
行政書士としての実務支援と、AI・IT活用支援を一体的に
今回の研修を通じて、改めて感じたことがあります。
それは、AI・ITの活用は、実際の業務を理解してこそ、具体的な改善につながるということです。
一般的なAI研修では、便利なツールの紹介や操作方法の説明が中心になりがちです。
もちろん、それも大切です。
しかし、企業ごとに業務内容は異なり、取り扱う書類も、仕事の進め方も、抱えている課題も違います。
私自身、行政書士として顧問先の実務を支援しているからこそ、その会社がどのような仕事をしていて、どこに改善の余地があるのかを具体的に考えることができます。
そして、行政書士としての専門知識と、AI・ITの活用方法を組み合わせることで、単なるツールの導入にとどまらない、実務に根ざした業務改善を支援できると考えています。
「AIを使える人」を増やすのではなく、「AIを使って会社の仕事を改善できる人」を育てる。
これからも、顧問先企業の実務に寄り添いながら、AI・IT人材育成と業務改善の支援に取り組んでまいります。
