資金調達は「覚悟のスイッチ」である―起業家が事業資金を借りるべき理由(2026年9月4日)

資金調達は「覚悟のスイッチ」である―起業家が事業資金を借りるべき理由(2026年9月4日)

起業家やこれから起業したい人からの相談に乗っていると、高い確率で「お金は借りるべきでしょうか」という質問を受けます。一概には言えない部分もあるものの、私は多くの場合で「事業資金は借りるべきです」と明確に答えています。

なぜそこまで断言するのか。それは、人は身銭を切り、リスクを背負わないと本気にならないという、極めて現実的な真理があるからです。


リスクを背負った瞬間、人は本気になる

事業を始めるにあたって、事務所や店舗を借りる、金融機関から融資を受ける。こうした行為は一見リスクに見えますが、実はそれ以上に覚悟のスイッチとしての役割を果たします。

ここを経験した人は、やはり本気度が違います。毎月の返済があるという現実、家賃という固定費が発生する事実。それらは単なる負担ではなく、「絶対に軌道に乗せなければならない」という強制力を持った仕組みなのです。

もちろん、リスクを取らずに事業を軌道に乗せる人もいます。それ自体は素晴らしいことですし、否定するつもりは一切ありません。ただ、私がこれまで見てきた多くの起業家の中で、成功している人たちに共通していたのは、何かしらのリスクを背負い、覚悟を持って挑んだ人たちだったという事実です。

人は追い込まれると本気を出します。逆に言えば、逃げ道があると、無意識のうちに甘えてしまうものです。「まだ大丈夫」「もう少し様子を見よう」――そうやって先延ばしにしているうちに、チャンスを逃してしまうケースを、私は何度も目にしてきました。


自己資金だけでは、適切な投資ができない

融資を受けないということは、頼れるのは自己資金のみということになります。当然、生活費のことも考えなければならず、どうしても投資に消極的になってしまいます。

これは非常に危険です。なぜなら、適切な投資ができないと、事業活動そのものが停滞し、拡大しないからです。

事業において、投資は不可欠です。広告宣伝、人材採用、設備投資、システム開発――何をするにも資金が必要です。そして、事業が成長するタイミングには、必ず「ここで投資しなければ次のステージに行けない」という瞬間が訪れます。

そのとき、手元に十分な資金がなければ、どうなるでしょうか。せっかくのチャンスを逃し、競合に追い抜かれ、結果として事業が伸び悩む――そんな未来が待っています。

私は、経営者の役割は判断であり、決めることで物事は前に進むと考えています。そして、判断するためには選択肢が必要です。資金がなければ、選択肢も狭まります。資金調達は、その選択肢を広げるための重要な手段なのです。


起業当初が一番借りやすい理由

さらに重要なのは、起業当初が一番借りやすいという事実です。

これは意外に思われるかもしれませんが、実際にそうなのです。なぜなら、起業時には「創業融資」という特別な制度があり、実績がなくても、事業計画さえしっかりしていれば融資を受けられる可能性が高いからです。

逆に、起業後数年経ってから融資を申し込もうとすると、金融機関は決算書を見ます。そこで赤字が続いていれば、ほとんどの金融機関は貸してくれません。実績が求められるフェーズに入ってしまうと、融資のハードルは一気に上がるのです。

つまり、起業当初という「実績がない」タイミングこそ、逆説的に融資を受けやすい唯一のチャンスなのです。ここを逃すと、後から「やっぱり借りたい」と思っても、手遅れになることが非常に多いのです。


資金調達は、事業継続のための責任である

私は、売上・利益は目的そのものではなく、事業を継続させるための絶対条件であると考えています。そして、継続性こそが、社会や顧客に対する経営者の責任だと信じています。

その視点に立てば、資金調達は単なる選択肢ではなく、事業を継続させるための責任ある行動です。

事業が途中で止まってしまえば、顧客に迷惑をかけ、従業員を路頭に迷わせ、社会に対する約束を果たせなくなります。それを避けるためには、事業を継続できる体制を整えなければなりません。そのための資金調達なのです。


覚悟を持った起業家を応援したい

私は、本気の起業家を応援したいと思っています。

本気とは、口先だけの情熱ではありません。リスクを背負い、覚悟を持って、自分の人生と事業に向き合う姿勢のことです。そして、その覚悟を形にする一つの手段が、資金調達なのです。

もちろん、無計画な借金を勧めているわけではありません。事業計画をしっかり立て、返済の見通しを持ち、何のために資金が必要なのかを明確にした上で、適切に資金調達を行うべきです。

ただ、それでも多くの起業家が「借りるのが怖い」と躊躇してしまう現実があります。その恐怖は理解できます。しかし、その恐怖を乗り越えた先にこそ、本当の成長があるのです。


まとめ:資金調達は、事業における極めて大事な一歩

資金調達は、事業において極めて大事であると私は考えています。そして、起業当初にやるべきです。なぜなら、その時が一番借りやすく、かつ、覚悟を決めるための最良のタイミングだからです。

リスクを恐れず、適切な判断を下し、事業を前に進める。そのために必要な資金を確保する。それは、経営者としての責任であり、顧客や社会に対する誠実さの表れでもあります。

もしあなたが今、起業を考えているなら、ぜひ資金調達という選択肢を真剣に検討してください。それは単なる借金ではなく、あなた自身の覚悟を形にする行為です。そして、その覚悟こそが、事業を成功へと導く原動力になるのです。

私は、そうした本気の起業家を、心から応援しています。