2026年12月25日に施行される「こども性暴力防止法(通称:日本版DBS)」。
学習塾やスポーツクラブなどの民間事業者にとって、国の認定取得に向けた準備が本格化しています。
当事務所でも、現在、複数の事業者様へ日本版DBSの認定取得に向けた支援を行っています。
実際に準備に携わる中で感じているのは、この制度への対応は、想像していた以上に手間と労力がかかるということです。
特に、難しさを感じている点が2つあります。
1.雛形があっても、自社に合ったルールを作るのは大変
日本版DBSへの対応に必要な規程やルールについては、こども家庭庁から各種の雛形や参考例が公表されています。
そのため、一からすべてを考えて作成する必要はありません。これは事業者にとって大変ありがたいことです。
ただ、実際に作業を進めてみると、そう簡単にはいきません。
雛形をそのまま使えばよいわけではなく、自社・自施設の組織体制や業務の実態に合わせて、内容を具体化していく必要があるからです。
例えば、児童対象性暴力等が疑われる事案が発生した場合の報告・対応ルール。
誰が報告を受け、誰が対応を判断し、どのような手順で対応を進めるのか。責任者が不在の場合はどうするのか。
雛形には基本的な考え方や手順が示されていますが、それを実際の組織に当てはめようとすると、決めなければならないことが次々と出てきます。
特に、小規模な事業者では、限られた人員の中で複数の役割を担わなければならないケースもあります。
情報管理規程についても同様です。犯罪事実確認に関する情報を誰が取り扱い、どのように管理するのか。事業者ごとの管理体制に応じて検討する必要があります。
こうした作業を進めていると、「雛形を埋めること」と「実際に使えるルールを作ること」は、まったく違うと実感します。
書類の体裁を整えるだけなら、それほど難しくないかもしれません。
しかし、そのルールが現場で本当に機能するのか、無理なく実行できるのかというところまで考えると、なかなか骨の折れる作業です。
2.認定取得後の運用は、さらに大変ではないか
もう一つ、認定準備を進めながら感じているのが、認定取得後の運用の大変さです。
日本版DBSは、認定を取得して終わりという制度ではありません。
認定取得後も、対象となる従事者の犯罪事実確認をはじめ、相談体制の維持、従事者への研修、情報管理など、さまざまな取組を継続していく必要があります。
しかも、これらは一度実施すれば終わるものではありません。
新しい従事者を採用すれば、その都度必要な対応が生じます。研修についても継続的に実施し、受講状況を管理していかなければなりません。
相談窓口も、設置するだけでは意味がありません。実際に相談が寄せられたときに、適切に対応できる体制を維持する必要があります。
もちろん、いずれも子どもを性暴力から守るために重要な取組です。
ただ、日々の業務をこなしながら、これらを継続して実施していくことは、事業者にとって相当な負担になるのではないかと感じています。
特に、専任の事務担当者を置くことが難しい小規模事業者では、既存の業務に加えて、こうした管理業務を誰が担うのかという問題もあります。
認定を取得するために体制を整えることも大変ですが、その体制を維持し、日常業務として回し続けることは、さらに大変なのではないか。
これが、現在、認定準備を支援している中での率直な感想です。
3.認定はゴールではなく、スタート
日本版DBSは、子どもを性暴力から守るための重要な制度です。
その趣旨については、私自身も大いに賛同しています。
一方で、制度の実効性を確保するためには、事業者が継続して取り組める仕組みにすることが欠かせません。
立派な規程を作っても、実際に運用できなければ意味がありません。
また、認定取得のために無理をして体制を整えても、その後の運用が続かなければ、制度本来の目的を果たすことは難しくなります。
だからこそ、認定準備の段階から、「このルールを自社で本当に運用できるのか」「認定取得後も継続できるのか」という視点を持つことが大切だと思います。
私自身も、支援を進める中で、規程やルールの整備だけでなく、その先の運用まで考えることの重要性を改めて感じています。
日本版DBSの認定は、ゴールではなくスタートです。
認定を取得すること自体が目的にならないよう、子どもを守るための仕組みを、いかに現場に根付かせていくか。
これから認定取得を目指す事業者にとっても、そして認定準備を支援する私たち専門家にとっても、そこが大きな課題になるのではないかと考えています。
