経営支援の仕事をしていると、意思決定について考えさせられる場面によく出会います。
先日も、新規事業の立ち上げを検討している事業者の方とお話しする機会がありました。
事業計画を作り込み、収支シミュレーションも何度も見直し、社内でも繰り返し議論を重ねていました。
一見すると、とても慎重で堅実な進め方に見えます。
しかし、検討を続けている間に、第一希望だった候補は他社に決まり、次に検討していた候補も埋まってしまいました。
結果として、また振り出しに戻ることになりました。
「議論したこと」と「情報が増えたこと」は違う
このようなケースを見るたびに感じるのは、
社内でたくさん議論したことと、意思決定に必要な情報が増えたことは別物だ
ということです。
社長や幹部が何度も会議を開けば、論点は整理されます。
リスクも洗い出せます。
ただし、参加者全員が同じ情報しか持っていなければ、新しい情報は増えません。
議論は深まっても、判断材料は増えていないのです。
むしろ、「もう少し考えよう」「他の可能性も検討しよう」という話になり、意思決定だけが先送りされることもあります。
外部の知見が必要な場面がある
新規事業や新規出店、新たな設備投資などは、社内だけでは分からないことが数多くあります。
行政の考え方。不動産市場の動き。金融機関の見方。業界特有の慣行。
こうした情報は、社内会議を何回開いても手に入りません。
必要なのは、「もっと議論すること」ではなく、「詳しい人に聞くこと」である場合も少なくありません。
経営者の方から相談を受ける中で、社内で何週間も悩んでいたことが、外部の専門家に30分相談しただけで整理できる場面を何度も見てきました。
中小企業の強みはスピードにある
中小企業は大企業ほど人も資金もありません。
その代わりに持っているのが、意思決定の速さです。
だからこそ、完璧な情報が揃うまで待つよりも、必要な情報を外部から取りに行き、ある程度の段階で決断することが重要になります。
もちろん、無謀な判断を勧めたいわけではありません。
ただ、経営においては「決めないリスク」「決めなかったことによる機会損失」も存在します。
物件は待ってくれません。市場も待ってくれません。良い人材も待ってくれません。
慎重さが強みになる場面もありますが、慎重さが機会損失につながる場面もあります。
社長の仕事は「正解を探すこと」ではない
経営には、不確実性がつきものです。
どれだけ調べても、どれだけ数字を作り込んでも、未来を100%予測することはできません。
だから経営者の仕事は、正解を探し続けることではなく、必要な情報を集めたうえで決断し、その結果に責任を持つことだと思います。
もちろん、慎重さは大切です。
ただし慎重さが行き過ぎると、行動できなくなります。
そして行動しなければ、新しい情報も得られません。
経営においては、「決めることで前に進めること」もまた重要な仕事なのだと感じています。
私は日々、事業者の皆さまの行政手続きや許認可申請を支援していますが、実際には書類作成だけではありません。
行政との折衝、論点整理、スケジュール管理、必要に応じた専門家との連携など、プロジェクト全体を前に進めるための伴走支援を行っています。
「社内で検討しているけれど、なかなか前に進まない」
「何から手を付ければいいのか整理したい」
そんな時は、一度外部の視点を入れてみるのも一つの方法です。
考え続けることが目的になっていないか。
決めないことによるコストが発生していないか。
一緒に整理しながら、前に進むお手伝いができればと思います。
