「顧問契約を結べば、いつでも相談できます」
専門家の顧問契約では、よく聞く言葉です。
ただ、私は以前から少し疑問に思っています。
「相談できること」そのものに、中小企業は毎月お金を払う必要があるのでしょうか。
もちろん、困ったときに専門家へすぐ相談できる安心感には価値があります。
しかし、中小企業の経営者は忙しい。
毎月、専門家に相談したいことが都合よく発生するわけでもありません。
そう考えると、「月額○万円で相談し放題」というだけでは、顧問契約の価値として少し弱いのではないかと思うのです。
顧問契約で買うべきなのは「相談する権利」ではない
では、中小企業に顧問契約は不要なのでしょうか。
私はそうは思いません。
むしろ、一定の企業にとっては非常に有効です。
ただし、その目的は「いつでも相談できるようにしておくこと」ではありません。
私が考える顧問契約の価値は、
会社の中に放置されがちな課題を、継続的に片付けていくこと
にあります。
会社を経営していると、「やったほうがいい。でも、今すぐやらなくても会社は止まらない」という仕事が大量に発生します。
契約書を見直したほうがいい。
規程も古くなっている。
社内の書式もバラバラになっている。
マニュアルを作ったほうがいい。
この業務はもっと効率化できる気がする。
生成AIも活用したい。
しかし、今日やらなくても会社は動く。だから後回しになります。
そして半年後も、だいたいそのままです。
中小企業にとって本当に厄介なのは、こうした「緊急ではないが、重要な仕事」ではないでしょうか。
当事務所の顧問契約では「実際に手を動かす」
そこで当事務所では、顧問契約を単なる相談窓口にはしていません。
たとえば、
・恒常的に発生する契約文書の作成・整備
・社内規程や各種文書の整備
・業務上の課題整理
・生成AIを活用した業務改善
・生成AIを業務で活用するための仕組みづくり
など、実際の課題解決につながる業務を顧問契約に組み込んでいます。
「何かあったら相談してください」ではなく、
「会社の中にある課題を、一緒に片付けていきましょう」
という考え方です。
生成AIも「導入すること」には、それほど意味がない
これは生成AIについても同じです。
最近は、「AIを導入しなければ」「ChatGPTを使わなければ」と考える企業も増えています。
しかし、私は生成AIを導入すること自体には、それほど意味がないと考えています。
大事なのは、AIを使って、何を解決するのか。です。
たとえば、毎月何時間もかけて作っている文書がある。
同じような問い合わせに何度も回答している。
過去の資料を探すことに時間を取られている。
社長しか分からない業務がある。
担当者によって成果物の品質が違う。
こうした具体的な問題があって初めて、生成AIが役に立ちます。
場合によっては生成AIを使わないほうがいいこともあります。
「AIを入れる」のではなく、
「会社の課題を解決する。その手段としてAIが有効なら使う」
という順番で考えるべきです。
当事務所が生成AI活用支援を顧問業務に組み込んでいるのも、そのためです。
中小企業に必要なのは「もう一人社員を雇うほどではない仕事」を担う人
中小企業には、少し特殊な問題があります。
会社を良くするために必要な仕事はたくさんある。
しかし、その仕事だけを担当する社員を一人採用するほどの業務量はない。
法務担当者を一人置くほどではない。
業務改善担当者を一人置くほどでもない。
AI担当者を一人採用するほどでもない。
だから結局、社長や幹部がやります。
そして、本業が忙しくなると後回しになります。
これは経営者の能力の問題ではありません。単純に、リソース配分の問題です。
だったら、その機能をすべて社内に持つ必要はありません。
必要な機能だけ、外部に持てばいい。
私は、これからの中小企業における顧問契約には、そういう役割があっていいと思っています。
「困ったときに呼ぶ専門家」から、「会社を良くする外部スタッフ」へ
行政書士というと、「許認可が必要になったら頼む人」「契約書が必要になったら頼む人」というイメージがまだ強いと思います。
もちろん、それも重要な仕事です。
ただ、当事務所ではもう少し広く考えています。
契約文書や規程類を継続的に整える。
業務上の問題を整理する。
生成AIを使えるところには使う。
業務の属人化や非効率を少しずつ減らしていく。
必要なときだけ呼ばれる専門家ではなく、会社のことを理解したうえで、継続的に改善に関与する。
言ってみれば、「社外に置く、小さな法務・業務改善チーム」のような存在です。
顧問料を「保険料」にしない
私は、顧問料を「何かあったときのための保険料」にしてしまうのは、少しもったいないと思っています。
何もなかった月にも顧問料を払う。
相談しなかった月にも顧問料を払う。
それでは、経営者が「本当に必要なのか」と疑問を持つのも当然です。
そうではなく、契約書が一つ整った。
規程が一つ改善された。
面倒だった業務が一つ自動化された。
社員が毎月2時間かけていた作業が30分になった。
社長しかできなかった仕事を、社員でもできるようになった。
そうやって、毎月少しずつ会社に「改善」が残っていく。
顧問料を払った結果、会社の中に何かが蓄積されていく。
私は、そのほうが健全な顧問契約だと思っています。
では、中小企業に顧問契約は必要なのか
結論として、すべての中小企業に顧問契約が必要だとは思いません。
社内ですべて対応できている会社であれば、無理に契約する必要はありません。
一方で、
「やったほうがいいと分かっているのに、半年以上放置している仕事がいくつもある」
という会社であれば、顧問契約を検討する価値はあると思います。
専門家を「問題が起きたときに呼ぶ人」として使うのか。
それとも、
「問題が起きにくく、仕事が回りやすい会社を一緒につくる人」として使うのか。
同じ顧問契約でも、その違いはかなり大きいと思います。
当事務所では、後者の顧問契約を目指しています。
