顧問先企業のスタッフの方を対象に実施している、全4回の「生成AI活用・業務改善研修」。
先日、第2回の研修を実施しました。
今回のテーマは、「安全に、速く、実務で使う」です。
第1回では、ChatGPTなどの生成AIに実際に触れながら、
「この仕事、時間がかかっているな」
「これ、面倒だな」
「もっと良いやり方はないかな」
という、日常業務の中にある「課題」を見つけることに重点を置きました。
第2回からは、そこからもう一歩進みます。
AIの便利な機能を知るだけではなく、実際の仕事の中で、どう使えば業務そのものを改善できるのか。
今回は、実践を中心に研修を行いました。
まずは「AIを使うときの注意点」から
AIは非常に便利なツールですが、仕事で使う以上、
「何でもAIに入れていい」「AIが答えたから正しい」という使い方はできません。
そこで今回は、実践に入る前にAIを使用するうえでの代表的な注意点について確認しました。
研修では、
- AIが作ったものでも、最終的な確認・判断・責任は人が持つこと
- 個人情報や機密情報を安易に入力しないこと
- AIは事実ではないことを、もっともらしく回答する場合があること
- 著作権や既存文章のコピーに注意すること
- AIが回答する「一般論」と実際の現場は違うこと
という5つのポイントを取り上げました。
特に重要なのが、AIによる「ハルシネーション」です。
生成AIは、分からないことに対して必ず「分かりません」と答えてくれるわけではありません。
存在しない情報を提示したり、古い情報を使ったり、間違った数字をもっともらしく回答したりすることがあります。
そのため、
AIに根拠や出典を求める。
重要な情報は、人が一次情報を確認する。
という使い方が必要になります。
AIは「優秀な下書き担当」ではありますが、「最終判断者」ではありません。
この役割分担を理解したうえで使うことが、業務でAIを活用する第一歩だと思います。
「タイピングしなくてもいい」という発見
ここからは実践です。
今回、特に反応が良かったものの一つが、音声入力とAIを組み合わせた仕事のやり方でした。
AIを使うというと、「パソコンを開いて、ChatGPTに文章を入力する」というイメージを持っている方も多いと思います。
しかし、そもそも綺麗な文章を入力する必要はありません。
例えば、管理しているビルを社員が現地確認したとします。
会社へ戻る途中にスマートフォンへ向かって、「今日○○ビル見てきたんだけど、3階のエアコンが……」と、見たこと、聞いたこと、気になったことをそのまま話す。
文章として整理されていなくても構いません。
それを音声入力ツールで文字にし、AIに、「今日の現地確認報告として整理して。最後にやることも一覧にして」と依頼する。
すると、話した内容から確認事項、問題点、費用、今後必要な対応などを整理できます。
つまり、
現場確認 → 帰社 → PCを開く → 思い出しながら報告書を書く
という従来の仕事の流れ自体を変えられる可能性があります。
「AIを使って文章を書く時間を短くする」というより、そもそもタイピングする仕事を減らせないか?という発想です。
今回、ここはとても興味を持っていただけました。
NotebookLMで「会議後の仕事」を変える
もう一つ、特に反応が良かったのがNotebookLMを使った議事録作成です。
研修では、実際の会議を想定した文字起こしデータを用意しました。
人が普通に話している会議なので、話が前後したり、途中で別の話題が入ったり、誰が何をやるのかが会話の中に散らばっていたりします。
それをNotebookLMに読み込ませ、
「決定事項、保留事項、担当者、期限、次回までにやることに分けて整理してください」
と指示します。
すると、単なる「会話の要約」ではなく、
何が決まったのか。
何がまだ決まっていないのか。
誰が何をするのか。
次回までに何を確認する必要があるのか。
という、会議後に必要になる情報を整理できます。
ここで重要なのは、議事録を作ること自体が目的ではないということです。
会議が終わった後に、「結局、誰がやるんだっけ?」「何が決まったんだっけ?」「次回までに何を確認するんだっけ?」とならない状態を作る。
AIによって、会議後の仕事まで改善することに意味があります。
AIに「お手本」を見せる
今回はもう一つ、AIに「お手本」を渡すという使い方も体験してもらいました。
例えば、会社の中に「社長から評価が高かった提案書」があるとします。
その提案書をAIに読み込ませ、
「この提案書の構成、文章量、表現、表の使い方、提案方法などを分析してください」
と指示します。
そのうえで別の案件について、
「先ほどのお手本と同じような形式で作ってください」
と依頼します。
AIに一から細かく説明するのではなく、自分たちが欲しいものを実際に見せるわけです。
これは単なるAIのテクニックではありません。
社長やベテラン社員が、
「この提案書は分かりやすい」
「こういう報告をしてほしい」
と感じているものには、その会社なりの「良い仕事の型」があります。
そのお手本をAIに渡すことで、これまで個人の経験や感覚の中にあったものを、他のスタッフが再現しやすくなる可能性があります。
AIを使って、会社のノウハウを共有する。
こうした使い方も、これから非常に重要になってくると思います。
大切なのは「禁止」ではなく「設計」
今回の研修を通じて、改めて感じたことがあります。
生成AIについては、
「個人情報を入れてはいけない」
「AIは間違える」
「著作権に気をつけなければいけない」
など、どうしても「危ないから使わない」という話になりがちです。
しかし、今回の研修資料でもお伝えしたのは、覚えるべきは「禁止」ではなく「設計」ということです。
リスクがあることを理解したうえで、
「これはAIに任せる」
「これは匿名化してから使う」
「ここから先は人が判断する」
「この情報は一次情報を確認する」
と、AIと人間の役割をきちんと設計する。
そのうえで使えば、AIは日常業務を大きく変えてくれる可能性があります。
AIで「作業」を減らし、人にしかできない仕事へ
第1回では、AIを使えるようになることよりも、
「自分の仕事の中から課題を見つけること」
が大切だとお伝えしました。
第2回では、そこから一歩進み、
課題を見つける
↓
安全な使い方を考える
↓
AIを実際の業務に組み込む
↓
仕事のやり方そのものを変える
というところまで体験してもらいました。
音声で話した内容から報告書を作る。
会議の文字起こしから、決定事項やTODOを整理する。
過去の良い提案書をお手本に、新しい提案書を作る。
こうした使い方が当たり前になれば、人が「書き写す」「整理する」「形式を整える」といった作業に使っていた時間を減らせます。
そして、その分の時間を、
考える。
判断する。
お客様と話す。
より良い仕事のやり方を考える。
という、人にしかできない仕事へ使えるようになります。
この研修で目指しているのは、やはり「AIに詳しい人」を作ることではありません。
AIを一つの道具として使いながら、自分自身で仕事を改善できる人を増やすこと。
残り2回の研修でも、実際の業務を題材にしながら、さらに実践を重ねていきます。
