今回は、不動産業を営む顧問先様への生成AI活用支援の事例をご紹介します。
「最近、頭の整理ができていない状態が続いているんです」
ある日、顧問先の社長から、そんなお話がありました。こちらは、社長と数名の従業員で事業を営む不動産会社です。
日々、経営者として考えなければならないことはたくさんあります。
目の前の仕事のこと。会社のお金のこと。従業員のこと。これから会社をどうしていくのか。
一つひとつは考えている。
でも、いろいろなことが同時に頭の中にあると、考えがうまく整理できない。
そんな状態が続いているとのことでした。
そして、「生成AIがその解決の一助になるのであれば、使ってみたい」というご相談をいただきました。
まず、AIの話をする前に
生成AIの相談を受けると、「では、このAIツールを使いましょう」と、すぐにツールの話をしたくなるかもしれません。
でも私は、まず社長と対面でお話をすることにしました。
なぜ頭の整理ができていないと感じるのか。
今、経営についてどんなことを考えているのか。
何が見えるようになったら、少し楽になるのか。
話題を限定しすぎず、いろいろなお話を伺いました。
すると、会話をしていくうちに、少しずつ「こういうものがあったらいい」というものが見えてきます。
その一つが、会社の財務状態でした。
「会社の数字を、必要なときに自分で分析して、状況を把握できるようにしたい」
そこで、これは生成AIが力を発揮できそうだと考えました。
社長に合いそうなAIツールをご紹介し、その場で実際の使い方までご案内しました。
私は、生成AIの活用支援では、この順番が大事だと思っています。
AIありきで考えるのではなく、困っていることを先に見つける。
そのうえで、「それならAIをこう使ってみましょう」と考える。
AIは便利ですが、使うことそのものが目的になってしまうと、なかなか定着しません。反対に、「これを解決したい」が先にあると、AIはとても頼もしい道具になります。
そして、「社長専用のAI」をつくることに
その後、もう一つご提供したものがあります。
当事務所で開発した、この社長専用のカスタムAIです。
普通の生成AIと少し違うのは、あらかじめ社長の考え方や、会社がこれから目指していきたい方向性などを組み込んでいること。
生成AIを使っていて、
「言っていることは正しいんだけど、なんだか一般論なんだよな……」
と感じたことがある方もいるのではないでしょうか。
このカスタムAIは、単に質問に答えるだけではなく、社長の考え方や会社の背景を踏まえながら、もう一歩深く考えられるように設計しました。
答えを教えてくれるAIというより、「それって、こういうことでは?」「別の角度から考えるとどうだろう?」と、一緒に考えるための壁打ち相手に近い存在です。
提供後、社長からは、「毎日、壁打ちに使っています」と言っていただきました。
これは、つくった側としても大変嬉しい言葉でした。
特別なときだけ使うものではなく、経営を考える日常の中にAIが入ったということだからです。
AIがあれば全部解決するとは思っていない
私は生成AIを使ったサービスを提供しています。
便利だと思っていますし、経営者にとって、とても心強いツールにもなり得ると思っています。
でも同時に、人にしかできないこともあると考えています。
だから顧問先の社長には、AIをご提供したあとも定期的にお話を伺います。
「AIを使っていて、不便なところはありませんか?」
「それ以外に、最近何か困っていることはありませんか?」
「会社をこれから、どうしていきたいですか?」
こういった問いを、意識して投げかけるようにしています。
話しているうちに、「そういえば、こんなことも気になっていて」と、新しい話が出てくることもあります。
そこから、次の課題が見つかることもあります。
AIは、いつでも呼び出せます。
感情を持ちませんから、何度同じことを聞いても嫌な顔をしません。
考えがまとまっていなくても、壁打ちに付き合ってくれます。
これは、AIのとてもいいところです。
一方で、人と話しているからこそ出てくる言葉もあります。
本人もまだ課題だと思っていなかったことに、会話の中で気づくこともあります。
私は、その両方をうまく使えたらよいと思っています。
AIを入れることではなく、「経営が少しやりやすくなること」
今回のご相談は、「生成AIを導入したい」から始まったわけではありません。
「頭の整理ができていない」という、経営者の一言から始まりました。
そこから話を聞き、課題を一緒に整理し、その中でAIが役に立ちそうなところにAIを使う。
そして、AIだけでは拾いきれない部分は、これからも人として話を聞く。
生成AIの活用支援というと、少し難しそうに聞こえるかもしれません。
でも私は、もっとシンプルに考えています。
AIを使うことで、経営が少しやりやすくなる。
そのために、どこで、どう使えばいいのかを一緒に考える。
そんな支援を、これからもしていきたいと思っています。
「AIには興味がある。でも、自分の会社で何に使えるのかはよくわからない」
そんな状態からでも大丈夫です。
むしろ、最初から使い道を決めなくてもいいのかもしれません。
まずは今困っていること、頭の中にあることをお聞きする。
そこから一緒に、AIの使いどころを探していきます。
※本記事は、顧問先様のプライバシーに配慮し、事業者を特定できない形でご紹介しています。
